2010年5月12日水曜日

山梨の新エネルギー導入現場を視察して

こんにちは。
すっかり春になりました。
お元気でお過ごしでしょうか?
メールマガジン11号(4/30)で配信した内容を抜粋して掲載いたします。


●環境エネルギーコラム1:
第7回トークショー「山梨の新エネルギー導入現場を視察して」
松本真由美特任研究員

今月16日(金)17日(土)に、山梨県北杜市と都留市の新エネルギー導入
の状況を視察団の一員として見学する機会に恵まれました。最初に訪れたのは、
北杜サイトと呼ばれるメガソーラー、大規模電力供給用太陽光発電系統安定化
等実証実験研究現場です。北杜市は、日照時間が日本一で、ここでは2MW級の
太陽光発電システムを構築・評価しています。

北杜サイトの特色としては、世界で初めてとなる複数の系統安定化技術をもった
国内最大級のパワーコンディッショナで、27種類の太陽電池モジュールを導入
しているのも世界でも他にないそうです。さらに環境への負荷を考えた先進的な
架台を使用し、コンクリート基礎が必要な通常の架台にくらべてライフサイクル
でのCO2排出量を約40%削減し、地盤の改良や残土の処理も不要のものに
なっています。できるだけ自然を損なわずに自然の恵みを生かしたエネルギーの
実証現場にしたいという思いが伝わってくるようです。





太陽の位置を常に追いかけながらレンズを使って太陽光を集める追尾型のシステムも
2種類導入され、評価されています。下のシステムは集光2軸追尾型(3kW)で、
レンズで集めた太陽光を700倍に高めてから太陽電池で発電することができます。



また15度、30度、45度傾斜角度の違いによる評価も行っていますが、
これまでの結果では30度の傾斜角度が一番発電効率がいいそうです。



続いて甲府へ移動し、燃料電池の研究開発拠点である山梨大学燃料電池ナノ
材料研究センターを訪れました。渡辺正廣研究センタ―長から具体的な研究内容
についてレクチャーを受け、その後はセンター内の施設について説明を
受けました。センターは2008年4月に設立され、燃料電池の本格普及を
めざし、ナノテクノロジーや劣化メカニズム解析等の先端技術の融合によって、
触媒・電界質膜・MEA等の燃料電池の材料研究を行っています。高性能セルの
ための基礎技術を確立するために、山梨大学を中心に、東京大学や早稲田大学、
そして複数の企業が共同して研究を進めています。

左の写真は、原子を動画で確認することができる顕微鏡で、世界にも数えられる
ほどしかないそうです。右は、開発した自動車用と家庭用の燃料電池の耐久性を
チェックするための実験装置で、簡便で確実な評価技術も確立することをめざして
いるそうです。




翌日は、都留市に移動しました。都留市は、かつての城下町で、市街地にも川が
流れています。今回訪ねた家中川小水力市民発電所「元気くん1号」は、
市役所のそばに立っていました。平成18年4月から運転を開始した直径6mの
木製水掛け水車、元気くん1号の発電能力は、最大で20kW。市役所の自家用電力
として使われている他、夜間や休日には電力会社に売電しています。市役所の電気
使用量の約18%をまかない、CO2削減量は最大で約80トンになります。

NEDOの補助金のほか、市民参加型ミニ公募債(つるのおんがえし債)でも
建設費用をまかなったそうですが、これは20歳以上の都留市の住民を対象とした
自治体が発行する地方債のことで、募集枠の4倍もの申し込みがあったという
関心の高さでした。都留市と市民が緊密に連携しながら元気くん1号の導入は
進められ、平成20年11月には自然エネルギー発電施設としてグリーン電力証書
発行者として認められています。
(下の写真:元気くん1号)





運転開始後元気くん1号はまたたく間に話題になり、全国からの問い合わせや
見学者がやってきました。そして平成22年3月には、元気くん1号から
数百メートル離れたところに元気くん2号が完成しました。水の町都留市の
シンボルとして、元気くん1号と元気くん2号は市民の応援を背中に稼働して
います。(下の写真:元気くん2号)




今回の視察では、山梨県の横内正明知事や北杜市の白倉政司市長、そして
都留市の小林義光市長とも面談する機会に恵まれ、新エネルギーを導入する
上でのさまざまな努力や意気込みなど、いろいろなお話を伺うこともできました。
地球温暖化問題や石油などの資源の枯渇問題を背景に、持続可能な低炭素社会
作りが求められていますが、県、市、市民、企業、大学が連携し、
英知と人材リソースを結集させ、地域の歴史や特性をじょうずに生かすことで、
新エネルギーの導入は着実に発展していくのだと改めて認識することができました。

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