2009年10月26日月曜日

トークショー報告

こんにちは。
きょうは秋雨、肌寒く感じます。

さて、先週22日(木)に丸山晴美さんを招いて
「自分でできる地球温暖化対策」をテーマに
トークショーを開催しました。
教養学部の飯塚修平さんが司会を務め、
省エネや節約についての楽しいトークで盛り上がりました。



省エネや節約のポイントは
「流れていくもの」「消えていくもの」を
できるだけ削減すること。
無駄を省くことで、環境にも配慮し、
自分が抱く夢に向かって貯金ができるという話に
うん、うんとうなづく人が少なくなかったようです。

丁寧に生きる、夢を持つ、今をしっかり生きていく、
・・・そうした言葉の数々も印象的でした。



今回ははじめて昼の時間帯に開催しましたが、
たまにはこうしたオープンスペースも
よかったです。

次回は、NEDOギャラリーで開催します。
また詳細についてはお知らせしますが、
司会は、飯塚さんが務めます。
今度はプロのDJを相手にどんなトークを展開してくれるのか
ひそかに私も楽しみにしています。


会場からも節約について熱心な質問が寄せられました


瀬川先生も丸山さんに質問


皆で記念撮影

2009年10月23日金曜日

ついにゴール!

こんにちは。
だいぶ秋らしい気候になってきました。

さて、第3回トークショーにゲスト出演してくださった
冒険家の風間深志さんから冒険が無事遂行されたとの
うれしい連絡をいただきました。

8月25日にオーストラリアの西の都パースをスタートした
WHO承認「運動器の十年世界キャンペーン」
障害者・オーストラリア5000km横断隊が、
10月16日、午後4時、東の都シドニーに無事到着致しました。
風間さんは横断隊の隊長です。

風間さん、そして横断隊の皆さん、お疲れ様でした!

現地でのエキサイティングな報告はこちらをご覧ください。
風間深志オーストラリア大陸自転車横断の旅

2009年10月16日金曜日

目からウロコ?の捕鯨問題

<○研究についての寄稿:大久保彩子特任研究員

「目からウロコ?の捕鯨問題:何が『問題』なのか」

新聞やテレビで捕鯨問題が報じられるとき、商業捕鯨の再開を目指す日本と、
感情的に、また強硬に捕鯨に反対する反捕鯨国(または反捕鯨団体)という
構図が必ずと言っていいほど登場する。そして、日本は食文化を守るために、
持続可能な資源利用のために、国際捕鯨委員会(IWC)の交渉において科学に
基づいた主張を展開している、とか、鯨が増えすぎれば鯨による魚の捕食で
漁獲量が減ってしまう、鯨は増えているのに捕るなというのはおかしい…等々、
いろいろな側面から「日本が捕鯨をしなければならない理由」が語られる。
そして、捕鯨に反対する国々ついては、その主張がどんなに
感情的で「非科学的」かが強調される。

しかし、日本は本当に商業捕鯨の再開を目指した政策をとっているのだろうか。
そして、現在、日本が科学研究のためとして実施している調査捕鯨の実態は
どのようなものなのか、鯨類の資源状態に対する国内外の科学者たちの見方は
どうなのか、また、そもそも鯨を食べることは「日本の食文化」と言えるのか。
こうした、議論の前提となるはずの事実関係をほとんど確認しないままに、
「捕鯨・イエスかノーか?」といった単純な図式で議論が盛り上がってしまうのも、
捕鯨問題の特徴である。

そこで本稿では、普段あまり報じられることのない、日本の捕鯨外交の実態に
ついて簡潔に述べていく。筆者はここ数年来、IWCの交渉会議にオブザーバー
として参加してきたが、その実態は、日本国内で報じられる姿とはだいぶ
違っている。日本は商業捕鯨の再開を目的として掲げていながら、その実現に
必要な行動を、ほとんどとってきていないのである。





(※写真は、国際捕鯨委員会IWCの会議の様子)

日本が商業捕鯨を再開するには、商業捕鯨モラトリアムを解除しなければ
ならず、そのためにはIWCで4分の3の賛成票を得る必要がある。日本は、
自らの主張を支持してくれる国の新規加盟を促しているものの、現状では
88カ国あるIWC加盟国のうち捕鯨推進・反捕鯨は約半数づつと拮抗しており、
新規加盟国の獲得だけでは、4分の3の賛成を得ることは不可能である。
現在、反捕鯨の立場をとる国々の半分を説得しなければならない。

実は、反捕鯨国とはいっても、厳しい管理の下でなら捕鯨を行ってもよいと
する国も存在する。商業捕鯨が再開された場合の鯨類の捕獲枠算定方式
(RMP)は、IWCの科学委員会により全会一致で勧告され、1994年にIWCも
これを正式に採択している。その後の交渉では、RMPで算出される捕獲枠の
遵守規制が焦点となってきた。RMPは、鯨類資源に関する様々な不確実性に
対する頑健性を備えた保全的な管理方式であり、RMPに従って、かつ、
国際的に合意された厳しい遵守規制の下でなら捕鯨を認めるべき、との声は
EU諸国の間でも出ていたのである。

日本がIWCの枠内で商業捕鯨を再開しようとするなら、どの程度厳しい規制
を講じ、また規制に必要な費用を負担する用意があるのかを示し、本格的な
交渉に着手すべきであった。しかし、日本は遵守規制の交渉において、捕鯨は
あくまで漁業の一つであり、過度な規制は必要なく、規制費用も全IWC加盟国
で負担すべきとの立場を曲げず、最も厳しい規制と、捕鯨国による費用負担を
求める国々との間で妥協を図ることはなかった。さらに、商業捕鯨モラトリアム
を解除するならば、各国の裁量で行われている調査捕鯨に何らかの国際規制を
かけるべき、との意見には、日本は真っ向から反対。遵守規制の交渉では、
そんな対立が長らく続き、交渉は2006年に決裂してしまった。

IWCの国際交渉を間近で見てみると、日本の調査捕鯨へのこだわりが、いかに
商業捕鯨の再開に向けて日本が取りうる行動を制約しているのかが、よく分かる。
日本は、商業捕鯨モラトリアムの発効を受けて、「商業捕鯨が再開された場合の
資源管理に役立てるため」として、国際捕鯨取締条約第8条に定められている
調査捕鯨の規定を活用し、商業捕鯨から調査捕鯨に「切り換え」た。当時、調査
捕鯨の研究計画の策定を担当した科学者は、長期間を必要とし、多くの捕獲頭数
を必要とする計画とするよう指示を受けたという。1987年の調査開始から
今までの捕獲頭数は、すべての鯨種・海域あわせて12,626頭。

調査捕鯨の計画は、事前にIWCの科学委員会に提出し審議することになって
いるが、科学委員会で指摘された改善案などを計画に反映させる義務はなく、
調査捕鯨は事実上、国際規制を受けることなく各国の裁量で実施することが
できる。日本はこれまで、反対国からの強い批判を受けながらも、捕獲対象と
なる鯨種を拡大し、捕獲頭数も大幅にアップしてきた。また、RMPによる
捕獲枠の算定には、調査捕鯨のデータは必要ないことや、研究成果に資源管理
に資する査読論文が極めて少ないことなどからも、商業捕鯨の再開に役立つ
ような内容にはなっていない。

また、外交交渉においても、調査捕鯨は商業捕鯨モラトリアム解除という点で
大きな阻害要因である。遵守規制の交渉で調査捕鯨が大きな対立点になって
いたことは先に述べた。さらに、IWCではこれまで数度にわたって、南極海の
調査捕鯨を停止または縮小すれば、日本の周辺海域において限定的な沿岸
捕鯨を認める提案が出されているが、日本はそうした妥協に応じたことはない。
日本は商業捕鯨モラトリアムによって経済的に困窮している地域の救済を
訴えてきたが、実際には南極海の調査捕鯨を優先させる行動になっている。

こうしてみると、日本の捕鯨外交は、何より調査捕鯨の維持拡大を最優先して
きたことがわかる。そして、調査捕鯨を維持していくには、実は商業捕鯨
モラトリアムは必要なのである。モラトリアムが解除されてしまえば、
「商業捕鯨再開のため」の調査捕鯨を継続する根拠がなくなる。調査捕鯨は
年間約5億円の国庫補助金と、調査の副産物として生じる鯨肉の売り上げ
収入で調査費用を賄っているが、商業捕鯨となったら、そのような補助金を
受け取ることはできなくなるだろう。そして、さらに重要なことに、モラトリアムが
解除されたとしても、南極海の捕鯨に乗り出す民間企業はいなそう、なのである。

現実には、IWCでは、「感情的で非科学的な反捕鯨国のせいで」、商業捕鯨
モラトリアムが解除される見通しはない。反捕鯨国もまた、日本の調査捕鯨を
一方的な行動として強く批判することで、鯨類保全の姿勢を自らの支持者たちに
アピールしながらも、調査捕鯨を国際規制のもとに置くための妥協はしていない。
こうしてみると、反捕鯨国の強硬な態度が、実は日本の調査捕鯨を支えている。
このように、日本と反捕鯨国の間には、お互いに不機嫌な顔をしつつも現状に
安住する、ある種の共生関係があるといえる。

果たして捕鯨規制のあり方は、これで良いのだろうか。答えは否、である。
国際的には、関係国の合意に基づく捕鯨の管理は不在のままである。国内的
には、商業捕鯨の再開に役立てるはずが、いまや国際交渉において商業捕鯨
再開の阻害要因となっている調査捕鯨を、税金を投入しながら実施し続ける
現在の日本の捕鯨政策は、責任説明を著しく欠いた状態にある。

ところで、鯨を食べることは日本の食文化であり、外国にとやかく言われる
筋合いはない、という言い方をよくに耳にする。しかし、1970年以降の国会
議事録と、朝日新聞の記事において捕鯨に言及した個所をすべてチェックした
ところ、捕鯨の文脈で「文化」という言葉が使われたのは、1979年が
最初である。それ以前は、「鯨は重要なタンパク源」という言い方はあるが、
文化の問題として論じられることはなかった。当時、「国際PR」という
広告代理店が、日本捕鯨協会の委託を受けて、捕鯨に好意的な有識者
グループを組織して捕鯨と日本の食文化とを結びつけた国内キャンペーンを
展開しており、その有識者グループのアピール文を紹介したのが、朝日新聞に
おいて捕鯨の文脈で初めて「文化」という言葉が使われた記事である。鯨は
日本の食文化、という言説は、もともとあったわけではなく、上記のキャンペーン
などを通じて構築されてきたものであることに、留意すべきであろう。

★詳しくは、Atsushi Ishii & Ayako Okubo (2007) “An Alternative Explanation
of Japan's Whaling Diplomacy in the Post-Moratorium Era” Journal of
International Wildlife Law & Policy, Volume 10, Issue 1, pages 55 – 87.
10.1080/13880290701229911(日本語版はhttp://www2s.biglobe.ne.jp/~stars/pdf/Ishii_Okubo_JIWLP_J.pdf
を、ぜひ読んでみてください。

大久保 彩子(おおくぼ あやこ):
東京大学先端科学技術研究センター特任研究員。
米本研究室所属。専門は環境政策論。商業捕鯨
モラトリアム以降の日本の捕鯨外交を新たな視点で
読み解く。

2009年10月8日木曜日

第4回トークショー開催!

秋以降も素敵なゲストをお招きして、環境とエネルギーについて
考えていきます。
一般からの参加も可能です。
ふるってご参加ください!

第4回新環境エネルギー科学創成特別部門トークショー
『自分でできる地球温暖化対策~エコフレンドリーなライフスタイルを考える』

日時:2009年10月22日(木)
12:10-12:50 (第1部 トークショー) 
12:50-13:20 (第2部 フリーディスカッション)
場所:東京大学教養学部生協前広場(生協北側)
ゲスト:丸山晴美さん(節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナー)
参加費:無料

TVや雑誌で数々の節約ワザを披露し、カリスマ節約アドバイザーとして活躍中の
丸山晴美さんをゲストにお迎えします。ひとり暮らしの学生にも役立つ省エネ術で
自分でできる地球温暖化対策を考えます。
省エネの視点からの身近な環境とエネルギー問題について、丸山さんと楽しく
ディスカッションしながらエコフレンドリーなライフスタイルを模索します!



学外で参加を希望される方はできるだけ事前の登録をお願いいたします。
お名前とご所属をお知らせください。

  申込先:info@komed.c.u-tokyo.ac.jp

日本の中期目標~先端研カフェより

引き続き昨日配信したメルマガから記事を転載します。
先端研では、カフェスペースでさまざまなセミナーを開催していますが
今ニュースでもよく取り上げられている中期目標について
第一線で活躍する研究者おふたりを招いたセミナーについての報告です。

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○環境エネルギーコラム:
新環境エネルギー科学創成特別部門セミナー
地球温暖化-日本の戦略(第3回)
『日本の中期目標-その評価と実現のための方策』

第3回を迎えた「地球温暖化-日本の戦略」セミナーが9月25日(金)
に先端研1階カフェで開催されました。
スピーカーとして、地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾
副主席研究員と国立環境研究所地球環境研究センターの藤野純一
主任研究員をお招きし、先端研NEDO特別部門の山口光恒特任教授が
案内役をつとめました。

先日の国連気候変動首脳会議の場で、鳩山首相が日本の中期目標として
20年までに1990年比「温室効果ガス25%削減」を国際公約として
表明しましたが、RITEの秋元氏からは、『日本の中期目標検討』と題し、
麻生政権時に策定した中期目標(2005年比15%削減)が中期目標検討委員会
において検討された当時の話を下記の4つの視点からされました。

① 長期的に求められる温室効果ガス排出削減に十分こたえたものか
② 国際社会における排出削減分担の中で十分な役割を果たせるか
③ 技術的に実現できる可能性のある目標か
④ 社会全体、家計にどのような影響が生じるか

結論として麻生政権時に表明した中期目標(2005年比15%削減)でも、
社会全体、家計に相当大きな負担が生じ、大変厳しいぎりぎりのレベルの
削減目標であり、世界をリードした目標であったということでした。
鳩山政権が打ち出した新たな中期目標については、設備投資の増大という正の
効果を見込んでも、10年ほどの期間で現時点で存在しないような新技術が
開発され広く普及するとは考えにくく、投資をすれば返ってくるとするのは
ミスリーディングで、過大な期待を抱くべきではないとの話でした。

国立環境研究所の藤野氏からは、2009年4月14日に行われた第7回中期目標
検討委員会での「中期目標に関する意見」として提出した資料が紹介されました。
国立環境研究所を中心とするAIMプロジェクトチームでは中期目標を検討する
にあたり、以下の順で4つの視点が重要だとしています。

① 長期的な地球温暖化の被害をいかに食い止めるか
② 長期を見据え、温室効果ガス排出量をどの水準にまで削減するか
③ 温室効果ガスの削減にあたってどのように衡平に分担するか
④ 温室効果ガス削減による経済的な影響をいかに抑えるか

大気中の温室効果ガスの濃度を450ppmに安定化する場合、先進国は
2020年に1990年比25%~40%の削減が、2050年には80~95%の削減が必要。
その際の対策の導入には追加的に費用がかかるものの、エネルギー費用の節約に
よって多くが相殺され、費用は回収することが可能で、温暖化対策に消極的な
場合に比べて経済成長の速度は減速するものの、経済は成長する見込みである
という結論でした。

対照的な見解を持つ両者のお話を伺った後は、先端研や他大学の研究者、
シンクタンク、産業界等多くの出席者から活発な質問が出され、2時間半の
セミナーは終了時間を過ぎてもまだ議論し尽くせないという雰囲気でした。
COP15が今年12月デンマークで開催されますが、アメリカや中国といった主要
排出国が意欲的な参加をしてくるのか、まだわかりません。
「温室効果ガス25%削減」については、日本全体での議論が必要になるのは
間違いありません。

※このセミナーの詳細は後日、先端研のホームページに掲載予定です。

太陽電池にかける期待

台風18号の影響で雨風強く、今朝はJRなどで電車が運休し
通勤超ラッシュにもまれました。

さて、昨日メルマガ5号を配信しました。
内田先生の「太陽電池にかける期待」と題した寄稿をご紹介します。

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「太陽電池にかける期待」

大変な時代になったと思う。今年1月、Change!(チェンジ)を合い言葉に、
オバマ氏が米国大統領に就任した。新大統領は直ちに風力・太陽光・
バイオマス等の開発と導入に10年間で1500億ドルを投じ、500万人規模の
新規雇用を生み出す政策を打ち立てた。

この気運は瞬く間に世界に波及し、日本では麻生前首相が環境投資で雇用拡大を
計る「日本版グリーン・ニューディール」構想の策定を指示した。地球温暖化対策と
景気刺激を両立させようとしたもので、省エネ技術や製品の開発・普及などへの
投資を促進し、二酸化炭素(CO2)排出量の抑制を図ると同時に、環境関連産業の
振興を通じ雇用を創出するという試みである。

 かくして自然エネルギーへの期待は高まる一方だが、太陽光発電は世界を
リードする日本でさえ現状は92万kW(2007年生産量)、全エネルギー消費量の
0.1%にも満たない。次世代の発電システムの開発は待ったなしの状況にあるが、
飛躍への課題は一にも二にもコストである。

 こうした中、“色素増感型”あるいは“グレッツェル・セル”などと呼ばれる
新型の有機系太陽電池が注目されるようになった。この電池は高純度のシリコン
半導体を使わず、ヨウ素溶液を介したシンプルな電気化学セル構造を持つのが
特徴で、電解質溶液の酸化還元反応を伴うことから光合成に例えて
“光合成模倣型光電池”といった呼ばれ方をすることもある。また毒性元素を
含まない・製造コストが低い等環境負荷も小さく、時代の要請に即したデバイス
でもある。今から来年以降の実用化動向が楽しみである。



内田 聡(うちだ さとし):
東京大学先端科学技術研究センター特任准教授。瀬川研究室所属。
専門は色素増感太陽電池、スポンジ酸化チタンの研究。
自身のホームページ『内田Home Page』は一日のアクセス数
1000件を超え、『色素増感太陽電池』のキーワードで
Geogle検索すると一番目に表記されるほど認知度が高い。