2009年10月8日木曜日

日本の中期目標~先端研カフェより

引き続き昨日配信したメルマガから記事を転載します。
先端研では、カフェスペースでさまざまなセミナーを開催していますが
今ニュースでもよく取り上げられている中期目標について
第一線で活躍する研究者おふたりを招いたセミナーについての報告です。

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○環境エネルギーコラム:
新環境エネルギー科学創成特別部門セミナー
地球温暖化-日本の戦略(第3回)
『日本の中期目標-その評価と実現のための方策』

第3回を迎えた「地球温暖化-日本の戦略」セミナーが9月25日(金)
に先端研1階カフェで開催されました。
スピーカーとして、地球環境産業技術研究機構(RITE)の秋元圭吾
副主席研究員と国立環境研究所地球環境研究センターの藤野純一
主任研究員をお招きし、先端研NEDO特別部門の山口光恒特任教授が
案内役をつとめました。

先日の国連気候変動首脳会議の場で、鳩山首相が日本の中期目標として
20年までに1990年比「温室効果ガス25%削減」を国際公約として
表明しましたが、RITEの秋元氏からは、『日本の中期目標検討』と題し、
麻生政権時に策定した中期目標(2005年比15%削減)が中期目標検討委員会
において検討された当時の話を下記の4つの視点からされました。

① 長期的に求められる温室効果ガス排出削減に十分こたえたものか
② 国際社会における排出削減分担の中で十分な役割を果たせるか
③ 技術的に実現できる可能性のある目標か
④ 社会全体、家計にどのような影響が生じるか

結論として麻生政権時に表明した中期目標(2005年比15%削減)でも、
社会全体、家計に相当大きな負担が生じ、大変厳しいぎりぎりのレベルの
削減目標であり、世界をリードした目標であったということでした。
鳩山政権が打ち出した新たな中期目標については、設備投資の増大という正の
効果を見込んでも、10年ほどの期間で現時点で存在しないような新技術が
開発され広く普及するとは考えにくく、投資をすれば返ってくるとするのは
ミスリーディングで、過大な期待を抱くべきではないとの話でした。

国立環境研究所の藤野氏からは、2009年4月14日に行われた第7回中期目標
検討委員会での「中期目標に関する意見」として提出した資料が紹介されました。
国立環境研究所を中心とするAIMプロジェクトチームでは中期目標を検討する
にあたり、以下の順で4つの視点が重要だとしています。

① 長期的な地球温暖化の被害をいかに食い止めるか
② 長期を見据え、温室効果ガス排出量をどの水準にまで削減するか
③ 温室効果ガスの削減にあたってどのように衡平に分担するか
④ 温室効果ガス削減による経済的な影響をいかに抑えるか

大気中の温室効果ガスの濃度を450ppmに安定化する場合、先進国は
2020年に1990年比25%~40%の削減が、2050年には80~95%の削減が必要。
その際の対策の導入には追加的に費用がかかるものの、エネルギー費用の節約に
よって多くが相殺され、費用は回収することが可能で、温暖化対策に消極的な
場合に比べて経済成長の速度は減速するものの、経済は成長する見込みである
という結論でした。

対照的な見解を持つ両者のお話を伺った後は、先端研や他大学の研究者、
シンクタンク、産業界等多くの出席者から活発な質問が出され、2時間半の
セミナーは終了時間を過ぎてもまだ議論し尽くせないという雰囲気でした。
COP15が今年12月デンマークで開催されますが、アメリカや中国といった主要
排出国が意欲的な参加をしてくるのか、まだわかりません。
「温室効果ガス25%削減」については、日本全体での議論が必要になるのは
間違いありません。

※このセミナーの詳細は後日、先端研のホームページに掲載予定です。

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